企業の知識を未来に残す──ヒューマックの現場から

企業OS設計・伴走DXの実践記録。ICTサロン桑名の活動報告。株式会社ヒューマック│代表 伊藤晴通│三重県桑名市

毎朝10時、誰もいないPCが仕事を終わらせている

「今日の分、何件だった?」——毎朝この一言のために、誰かがパソコンの前に座っていた会社があった。今はもう、その一言すら要らなくなった。

Before

三重県内のある事業者では、行政サイトから届く申込データを、担当者が毎日リモートで社内PCに入り、1件ずつ手作業でダウンロードしていた。このサイトはセキュリティ上の理由で、社内の決まったPCからしか開けない。だから「誰かが決まった時間にそのPCの前に座る」以外の選択肢がなかった。

件数が多い日はそれだけで時間が圧迫される。少ない日でも「今日は何件あるか」を確認するためだけに、同じ手順を毎回繰り返す。派手さはないが、平日は必ず発生する作業だった。

転機・取り組み

きっかけは「この作業、本当に人がやる必要があるのか」という一言だった。手順自体は毎回同じ。ログインして、カレンダーで対象日を選び、リストを開いて、1件ずつ保存する——手順が決まっているなら、それはAIエージェントに任せられる仕事だ。

HUMACが伴走してつくったのは、決まった時間に自動でサイトへログインし、その日の対象データを一括でダウンロードする仕組み。土日・祝日は自動で判定してお休みし、件数が前回と変わっていなければ「変化なし」と自動的に判断して余計な処理をしない。ダウンロードした結果は共有フォルダを通じて、印刷を担当するスタッフのところへ自動的に届くようにした。

After

今は毎朝10時、誰も触っていないPCが、その日の分をひとりで取りに行っている。担当者はもうリモートで社内PCに入る必要がない。印刷担当者は、共有フォルダを開くだけでその日の件数と中身を確認できる。何かあれば結果はメールでも届く。

「今日は何件だった?」と誰かに聞く必要も、誰かがそれに答えるために手を止める必要もなくなった。

「会社のOS」の観点から見ると

この事例に、派手さは何もない。AIが難しい判断をしたわけでも、劇的な効率化を謳うものでもない。だが「会社のOS」が目指しているのは、まさにこういう変化だ——毎日必ず発生するのに、誰かの手を止め続けている作業を、静かに、無人で回る仕組みに変えていくこと。

大きな仕組みを一気に入れ替えるのではなく、「これは本当に人がやる必要があるのか」を一つずつ問い直し、手順が決まっている作業から順にAIエージェントに委ねていく。派手な導入発表よりも、こういう小さな「もう聞かなくてよくなったこと」の積み重ねが、会社の時間を取り戻していく。

毎朝同じ時間に同じ作業をしている人は、どの会社にも一人はいる。その人の朝を少しだけ自由にすることから、会社のOSづくりは始まる。